令和7年3月11日に開催された「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」及び閣議において、特定技能制度及び育成就労制度の基本方針が決定されました。
昨年の法改正から注目されている育成就労制度の基本方針の決定や、特定技能の介護で訪問介護が解禁になるなど、注目される今回の閣議決定の重要ポイントをお伝えします。

育成就労・特定技能の基本方針
日本は外国人の育成・確保が必要不可欠
3月11日の閣議決定では、特定技能制度及び育成就労制度における外国人受入れの基本的な考え方として、以下のように説明されています。
現在、我が国は本格的な少子高齢化・人口減少時代を迎え、今後もその傾向は加速度的に進んでいくと予想される中、労働力人口の不足が深刻化の一途をたどり、また国際的な人材獲得競争も一層激化している現状を踏まえれば、我が国が魅力ある働き先として選ばれる国になるという観点に立ちつつ、専門的・技術的分野における人材の育成・確保を行っていくことが必要不可欠である。
※出典:出入国在留管理庁
令和6年に技能実習制度の廃止が決定し、それに代わる制度として育成就労が新設されましたが、育成就労制度も特定技能制度と同様に、人手不足を補うための制度であることが明記されました。
「育成就労」は原則3年で「特定技能」への移行を目指す
育成就労は3年間とされていますが、その間に日本で働きながら、特定技能へキャリアアップするためのスキルと日本語力を身に付けることが求められます。
- 育成就労は、受入れできる業種は特定技能より少ない
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育成就労を受入れできる業種は、特定産業分野(特定技能で受入できる分野)のうち、外国人にその分野に属する技能を本邦における3年間の就労を通じて修得させることが相当である分野に限って行う。とされています。
- 育成就労は、原則として直接雇用
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育成就労外国人の雇用形態については、原則として、フルタイムとした上で直接雇用とする。とされています。
- 育成就労は、終了までに日本語試験N4レベル(A2)と特定技能評価試験に合格
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育成就労外国人は、終了までに特定技能の要件である日本語試験と、技能評価試験を合格することが必要となります。
育成就労・特定技能1号・特定技能2号の比較
長期的な育成計画で、企業の戦力として外国人材を確保するために、在留資格が、育成就労⇒特定技能1号⇒特定技能2号のようにキャリアアップしていくことが想定されています。
育成就労
特定技能1号 特定技能2号3つの在留資格の水準や期間の比較は以下のようになります。
育成就労・特定技能1号・特定技能2号の比較表
育成就労 | 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|---|
技能水準(※1) | 終了時点で特定技能1号水準に達することが必要 | 相当程度の知識または経験を必要とする技能 (特定技能1号評価試験、技能検定3級などを想定) | 熟練した技能 (特定技能2号評価試験、技能検定1級などを想定) |
日本語能力水準(※1) | 就労開始前:A1相当(相当講習でも可) 終了時点:A2相当 | A2相当 | B1相当 |
期間 | 3年 (試験に不合格だった場合、最長1年延長) | 通算で5年を上限 一部例外を規定(※2) | 在留期間の更新回数に上限はない |
家族帯同 | 基本的に不可 | 基本的に不可 | 可能 |
※1 技能・日本語能力に関する水準は試験により確認する。試験は分野別運用方針において定める(分野の実情に応じて上乗せ可能)。
※2 妊娠・出産等に係る期間は、通算期間に含めない。また、特定技能2号評価試験等に不合格になった場合、一定の要件の下で最長1年の在留継続を認める。
※出典:出入国在留管理庁 特定技能制度及び育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針の概要より
在留資格の受入可能分野の比較
在留資格により、受入できる業種(分野)も異なります。そのため、外国人を受入れるときはキャリアアップできる業種かどうかを確認することが大切です。
- 育成就労の受入れ可能分野
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未発表
- 特定技能1号の受入れ可能分野 16分野
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介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業
- 特定技能2号の受入れ可能分野 11分野
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ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
※介護は、国家資格の介護福祉士に合格することで在留資格「介護」への変更が可能であるため特定技能2号はありません。
※記載の情報は令和7年3月現在
ステップアップのための試験
育成就労から特定技能1号になるための試験
- 日本語試験A2相当(日本語能力試験N4レベル)に合格する
- 3年修了までに技能検定3級等又は特定技能評価試験に合格する
特定技能1号から特定技能2号になるための試験
- 5年終了までに2号特定技能評価試験に合格する
- 日本語試験B1相当(日本語能力試験N3レベル)に合格する(特定産業分野によります)
特定技能2号試験についてはこちらの記事も合わせてお読みください

介護・外食・製造業分野の運用方針の改正
【介護分野】訪問介護が解禁へ!
これまでの特定技能制度では、訪問介護などの訪問系サービスに外国人を従事させることは認められていませんでしたが、今回の閣議決定で訪問介護が解禁となりました。
訪問系サービスへ従事させることのできる外国人の条件
- 介護職員初任者研修課程等を修了している
- 介護事業所等での実務経験1年以上
- 特定技能外国人に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
- 特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと
- 特定技能外国人に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること
- ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること
- 特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと
【外食分野】旅館・ホテルでも外食の特定技能受入可能へ
これまで、ホテルや旅館では、「宿泊分野」で特定技能外国人の受入れができましたが、ホテル内の宴会場やレストランでの就労は認められていませんでした。インバウンド需要が急速に回復し、宿泊施設の飲食部門において、深刻な人手不足のため、今回の閣議決定で「外食分野」でホテルや旅館での就労が認められることになりました。
【宿泊分野】【外食分野】で従事できる業務は以下のとおりです。

【製造業分野】新たに民間団体を設立
工業製品製造業の分野では、外国人を受け入れる企業が経済産業省の「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入することになっていましたが、新たに民間団体を設立し、下記を取り込むことになります。
- 特定技能外国人の適正かつ円滑な受入れの実現に向けた共同ルール策定・遵守状況確認
- 技能試験の運営(試験場所の確保、受験者の募集、試験の実施)など
魅力的な働き先、日本であるために
今回の閣議決定で育成就労制度の基本方針が決まりました。日本が抱える人手不足を補い、日本が外国人から見て魅力ある働き先として選ばれる国になるためには、扱う人たちが法律を守り、外国人の支援を充実させていくことが大切です。我々、ガイア国際センターは、外国人労働者の受け入れ体制の充実と定着に励んでおります。
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